3.作業療法と感覚統合遊び

 お忙しいところ、前回のSST講座には多くの保護者の皆さんにご参加いただき、ありがとうございました。ポーテージプログラムはとても具体的な応用行動分析のシステムです。お子さまの行動の成長に少しでもお力になることができましたら、幸甚に存じます。

 


 さて、SST講座の第六回はうめだあけぼの学園の酒井康年先生をお招きします。うめだあけぼの学園といえば関東の療育の牙城です。酒井先生はそこでながらく作業療法士として活躍しています。感覚統合訓練にも習熟されており、感覚統合遊びの代表的な実践者のおひとりです。療育の世界で遊びの重要性は言うまでもありませんが、遊びを成長や発達に結びつけるための具体的な取り組みやヒントをいただけるのではないかと思っています。


 また酒井先生の療育のまなざしは本物です。作業療法士という枠をこえ、酒井先生のお人柄にも触れていただきたく、第六回SST講座を開催したいと思います。


1.酒井先生との出会い

感覚統合遊びのお話の前に、少しだけ余談です。酒井先生とは作業療法士養成学校の心理学と臨床心理学の講義でお会いしました。この養成学校は一度大学を卒業されたが多く、すでに現場の実践歴も十分な方々が在籍していました。手ごわい生徒がたくさんいる中で、ひときわ優秀で、本質的な質問をしていたのが当時学生だった酒井先生でした。回答も質もさることながら、療育へのまなざしが本物なのです。お話してすぐに、この学生は必ず斯界で指導的な人になると確信しました。

大正大学の授業では作業療法と感覚統合訓練についてご講義を賜りました。その時彼が述べた作業療法の定義と、命についての考え方は学生に感銘を与えました。彼は経験豊富な現場の実践者ですが、そのコアバリューにはブレがなく、子どもとご家族の身近で心強い支援者です。


2.感覚統合遊びという工夫

 先日、大阪でTEACCを取り入れている児童デイケアを見学に行きました。とてもシステマテックなのですが、遊びの質がワンパターンな点が気になりました。別日に東京の新しい療育施設を見に行きました。ここも、楽しく遊びの時間を過ごしているのですが、体の動かし方と感じ方に悩んでいるお子さんが多かったので、その点を含んで遊び方に工夫があれば、もっとよくなるのにと惜しい気持ちになりました。また練馬区学校支援センターのご厚意で、特別支援学校の先生とお話する機会に恵まれました。特別支援学校の先生方も作業療法士による感覚統合遊びを学びたいというニーズが大変高いことを知りました。療育に携わる施設でも作業療法士による感覚統合遊びを学ぶ機会はありそうでないのです。

 もちろん、全ての遊びを感覚統合遊びにするべきではないし、そういう主張をしているわけではありません。ただ、保護者や療育者が勝手に遊びの種類や目標を決めて、訓練のように遊ばせてしまうと、やがて子どもはその遊び方を拒否するでしょう。どの遊びも遊びである以上、子どもの興味から広げる必要があります。難しすぐれば優れた遊びのプログラムでも集中がきれてしまいますし、やさしすぎればその時々の過ごし方以上の内容になりません。

 言い方を変えると、「子どもに最適な遊び」は、専門家でも最初からわかることは少なく、試行錯誤のなかで、その子どもなりの工夫をしながら生まれるものです。感覚統合遊びも同様で、子どもが夢中になって遊ぶうちに感覚が育つようなプログラムは、日頃の良好な関係から生まれるでしょう。今回のSST講座ではそうしたお子さんとの関係づくりについても、どうぞ、ご質問ください。


3.感覚統合遊びは何を発達させるの?

感覚統合遊びといえばツイスターゲームやトランポリン、アスレチック遊びあるいはブラシによる感覚刺激の与え方が有名です。ビニールのプチプチをつぶしたり、補助者に助けられつつ様々な姿勢で滑り台か滑る遊びなどもよく知られていますが、それらは何のためにあるのでしょうか。

感覚統合遊びはお箸の使い方などの「手先の不器用さ」、キャッチボールなどの「運動の不器用」、歩いていてもよくぶつかるなどの「ボディイメージの不全」、座っているときの姿勢の悪さに代表される「姿勢づくり」、多動性などの「落ち着きのなさ」、集中力が続かないなど「注意の持続不全」、友だちのものを口に入れてしまったり、爪を噛みすぎたりする「行動不全」、「触られることへの強い拒否」などへの効果が有名です。

こうした目的を考慮して遊びの工夫も作られます。ツイスターをやることがそのまま感覚統合遊びではありません。私も最近、他人の髪に触れたり、髪の匂いを嗅ぐ癖があったお子さんや、音刺激を過剰に避けるお子さんの理解と行動改善に感覚統合遊びを適用しましたがが、その効果は明白でした。


4.遊びのおおらかさを

 作業療法士の木村は感覚統合遊びには「発達的視点」と「療育的視点」の両方を持つ必要があると指摘しています。発達的支援で考えれば、何を身につけるためというわけでなく、子どもはその子なりの遊びを行いますが、療育的視点では「どううしてできないのか」「できるようになるためには?」といった見方も求められます。

前回のSST講座でも申し上げましたが、保護者のみなさんがトレーナーそのものになってしまうと、お子さんと上手に遊ぶ余裕がなくなってしまいます。遊びの時間はあくまで遊びの時間ですから、楽しいこと、興味のあることを納得するまでできること、心も体ものんびりできることが優先されるべきです。

 お子さんとの遊びに余裕が持てない。少し訓練に偏ってしまう。そういう悩みを幾度も聞いてきました。酒井先生はそういう保護者の悩みとも向き合ってきた先生です。ぜひ、第六回SST講座にご参加ください、よろしくお願いいたします。