4.多動のコントロールと臨床動作法


1.多動はコントロールできるのか

 多動はコントロールできるのでしょうか。またADHDの多動と自閉圏の多動に違いはあるのでしょうか。お薬の効果はどのくらいなのでしょうか。もちろん、他の特徴と同じように多動も個人差が大きく、文脈もさまざまなので答えることが難しいのですが、一つだけ、その対応で共通するキーワードがあります。


それが『触れ方』です。触れるというと、手でどこかを触るイメージを持たれる方が多いのですが、ここで述べる「触れ方」は「思い切り抱きしめる」「軽く手をつなぐ」「肩をポンッとたたく」「体をふく」など身体を使ったコミュニケーションで見られることの総称です。子育て・子育ちはまさに「どう話すか」と「どう触れるか」の合算ではないでしょうか。


この触れ方が一つのキーワードとなり、少し時間はかかりますが、多動に効果をあげることを報告したのは、脳性まひのある子どもの肢体不自由とメンタルの改善を追及していた九州大学の臨床動作法のグループです。特に現在、文教大学に所属されている今野義孝先生が自閉圏のお子さんの気分と多動の改善に開発された「腕上げ動作コントロール」は多動で悩まれていた保護者の方々の福音となり、現在でも多くのご家族が今野先生の下を訪れています。みなさんの中には、もしかしたら実践されているご家族もあるかもしれませんね。


2.腕上げコントロール法

 腕上げ動作コントロール法とはどのようなものなのでしょうか。最も単純に(怒られることを覚悟で)簡潔に言いますと、子どもの腕に手を添えて、子どもと一緒に手を上げ下げします(下記写真2枚参照。今野先生の著書から引用しています)。


臨床動作法では、子どものからだを通して自分のからだに意識を向け、保護者の指示に合わせて自分のからだを動かし、自分のからだ【自体】のコントロール力を高めていきます。このとき、お子さんが言葉を理解していなくても、身体を通じたコミュニケーションでは、実は「対話」が成立します。子どものからだに触れながら、動かす方向、動かす速さを伝えると、その言葉の意味を理解しなくても、やがて要求されていることが伝わり、少しずつ意思疎通が可能になります。


だんだん、保護者が動きをリードするのではなく、子どもが自分の動作をリードできるようになることを「主動感」といいます。簡単なようですが、これが案外、難しい。運動量はたいしたことがないのですが、うっすら汗をかくこともあります。早すぎても遅すぎてもいけません。リードしすぎればつまらなくなり、まったくリードしなければ(最初のうちは)なかなかやってくれません。保護者のあせりは触れていると伝わりやすく、保護者もリラクセーションしていなければ継続できないでしょう。腕上げ動作コントロールとは「いきをあわせる」共同作業であり、その意味でコミュニケーションなのです。


臨床動作法では腕上げ動作コントロールのほか、肩上げ動作や踏みしめコントロールなどがありますが、そのどれも一見単純でありながらコミュニケーション能力の向上につながる奥が深い方法です。


3.多動にどうして効果があるの?

全ての多動行為に効果があるといえばうそになりますが、確かに多動の現象につながったケースは私も経験してきました。児童期で行う場合が多いけれどありますが、ある特別支援学校では中学生と高校生に踏みしめコントロールを導入しています。

どうして「いきをあわせる体験」が多動を鎮めるのでしょうか。そのメカニズムは実は(仮説はあるのですが)よくわかっていません。


ただ私は子どもの自律性の狭さが生む多動もあると思っています。多動の一部が子どもたちのわかってほしい気持ちの表れだとしたら、コミュニケーションの幅が広がり、落ち着く触れ方がなされる時間をもつことは、子どもの自律性を高め、その結果、全体として多動がおさまるのかもしれませんね。


今野先生は腕上げ動作コントロールを開発した後、「とけあい動作法」という、てのひら全体でここちよい刺激を与える子どもへの触れ方を教えています。やられてみると、実に気持ちよく、安心感が身体から沸き起こります。つまり、「触れ方次第で、安心感が生じる」ことは疑いありませんし、その結果、落ち着きがなくなっていた子どもが静かになる場面を実際に見てきました。私も勉強したのですが、まだまだ今野先生の域には到達しません。やっぱり練習が必要なのでしょう。


 みなさんも、腕上げ動作コントロールやとけあい動作法の一端を学んでみませんか。すでにやられている方もぜひ、ひごろの練習の効果を見せてください。触れ方については、一人で練習するより、みんなで練習したほうがうまくなると思います。研修会で、ぜひ、臨床動作法を体験してください。